渡辺竜平のハリウッド片道切符 第13回 リアルハリウッド~葛藤×選択~(完結編)

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渡辺竜平のハリウッド片道切符

ハリウッドにある門
アメリカで家族と再会し、そして、別れを告げた。それは一瞬の出来事で、後になって夢を見ていたのかと思った。
けれども、すぐに今まで通りのアメリカ生活に戻った・・・

2007年12月。もうこの頃は短期の演技クラスの終盤に差し掛かっていた。今までのアドリブ的なレッスンから台本を覚えて、パートナーとシーンを演じるというレッスンに変わった。これは経験不足の自分には難しかった。アメリカ人の感情や感覚、文化の違いの理解に苦しんだ。そして、このとき、アメリカ人はアメリカ人でもバックグラウンドによって考え方や使う言葉や癖などが全く異なると気付き始めた。日本のように同じ地方に住んでいるから同じ方言という感覚とはかけ離れていた。そして、いよいよ最後のレッスンの日が訪れた。

全員、自分が演じる役の台詞を頭に入れ、キャラクターに合った衣装を着ていった。自分の演じるキャラクターは自分よりも年上で皮肉屋的な役だった。それまではレッスンでまじめなキャラクターや少し変なキャラクターを演じたことがあった。他のクラスメイトの反応はまあまあで、先生に「興味深いわね」と言って貰えた。(これがアメリカ流のお世辞でないと願いたい)それからこのキャラクターを演じることになった。正直に言うとこの役の理解に苦しんだ。それは、この英語で皮肉を言うような奴がどんな人で、そして、どんな発音で言えば良いのか全く検討がつかなかった・・・自分の日本語で侵食され、勝手な味が付いてしまった英語では役を創造するには無力過ぎた。自分の発音がどれほどのものかというのも、これからしばらくしてようやく気づくことができた。すぐに自分の欠点がどれほどか気づけなかったのは、自分の欠点に目を瞑り続けていたからかもしれない。とにかくこのときの無力な自分は、演技で冒険してみようと思った。そして、今までにないような性格を作り出そうとした。そして、実際演技に望んだ。シーンは単純に言うと、ある親友同士の男女が一緒にドライブをするというものだった。しばらくして演技が終了した。結果は・・・

失敗だった。

演技で一番大きな冒険をして一番失敗した・・・まあ、冒険しなければ成功も失敗もしない無難になってしまうことに気づけたので、そう考えればプラスになるかも(苦笑)失敗の理由はキャラクターの性格の選択ミスだった。シーンの男女は仲良くないけれども、嫌いではないという関係だった。でも、自分が作り上げたキャラクターはただの無神経な冷たい男だった。そして、後は役に入る前の俳優としての段階でまだ十分に準備ができていなかった。舞台慣れをしていない自分は緊張すると台詞を早く読んでしまう癖があった。そして、「それがアメリカ人にとってあなたの英語を理解するのを難しくしてるのよ」と言われた。すべてのレッスンは幕を閉じた。もう一度やりたいと思う気持ちもあったがそれはできない。悔しかった・・・この経験から「演技力」と「英語力」の密接な関係があることに気づいた。どちらが欠けてもホンモノにはなれない。もしくは、少なくともその日本語訛りさえもプラスとなる個性に変えていくことができなければ・・・短期のレッスンだったけれども、多くを学ぶことができた。自分の山積みの課題のひとつを垣間見ることができた。そして、アメリカ人の中で一人日本人として戦うことができたことも収穫だった。

実生活では、アメリカでのいろいろなイベントを体験していた。独立記念日、ハロウィン、クリスマス。そして、年越し。そう気がついた頃にはもう2008年を迎えていた。除夜の鐘なしの年越し。たいした問題じゃなかった(笑)新年は友人と家で地味に迎えたけれど、それなりに楽しんだ。

振り返ってみると、もう当分長い間、アメリカにいるとなぁ感じた。そして、演技のレッスンも終わり、よりオーディション探しに熱がこもる。ただし、まだ脚本家のストライキがこの業界に影響を及ぼし続けていたのは確かだった。話を元の話に戻すと、前にも書いた通り、実生活では重大な問題に直面していた。そう、もう生活費が底を尽きそうになっていた!!学費や生活に最低限必要なものばかりのためにお金を使っていたので、これは信じられなかった。でも、よく考えるとアメリカに来るまでの間にそこまでお金を貯めてなかったのと自分の車がオーバーヒートしたことを考えれば割りに合っていたのだと思う(苦笑)僕にとっては、ある意味、車関係の問題がアメリカでの天敵だった・・・まあ、そこら辺のストーリーを掘り出すのは、また今度にして置きたいけれど(汗)

語学学生としての生活はどうだったか?順調に次のクラスへと進みESLコースという口頭で使う英語のクラスはコンプリートすることができた。
そして、それからTOEFLテスト対策のようなクラスに移るけれど、僕が求めていたのは、テスト用の英語ではなくもっと実践的な生きた英語だった。だから次第に自分はここにいるべきなのだろうかと疑うようになっていった。

新年新たにということでオーディションに対する考えも改めた。だけれども、いきなり変わった気持ちに僕のお財布はついて来ることはできなかった。これまでの間は友人にオーディション用の写真を撮ってもらっていたけれど、そろそろ限界を感じ始めていた。そして、プロのカメラマンに写真を撮ってもらおうとしただけれども・・・もう僕にはオーディション用の写真のためのお金さえ残っていなかった!それは死活問題だ。どうにかしなければいけなかった。この状況から脱出するために何か大きなことを起こす必要があった!!

自分の人生の中のすべてのことが転機を迎えようとした。いやっそれを必要としていた。

こんな状況にいたのだけれども、良い点はアメリカに来たばかりの頃に比べるとより自分が本当にやりたいことが具体的ではっきりしていた。ただ、いくつかの小さな目標や大きな夢を叶えるには、このままではいけないなとだけ感じた。例えば、この状況から抜け出すために、両親から毎月仕送りをしてもらうって手もあったかもしれない。でも、自分が勝手にアメリカでやっていることに対して親は責任を持つ必要はない。そして、自分でこの道を切り開くことに意義があったのでその選択肢はすぐに捨てた。そして、もうひとつの選択肢は・・・

 

「一時帰国」

他にも手を尽くせばいろいろな選択肢は見つかったかもしれない。だけれども、例えアメリカにいたとしても、その日暮らしをするつもりはなかった。最初は一時帰国なんて馬鹿げた考えだと思ったけれど、時間が経つにつれ自分がどんな立場にいるのかがはっきりしてきた。役者として前進するだけの経済力のない自分が本当に無力だと感じた・・・夢を追ってやってきたけれど、やろうとすればもっと日本で準備をすることができたかもしれないと思った。日本にいるときは一秒でも早くアメリカの土地を踏みたいと思った。下見だけでもしてみようとも思った。そして、どうやら今回のアメリカ滞在は本当に下見として幕を閉じようとしていた。時間に決断を迫られていた。帰国してもまたアメリカに戻ってこれる保障はない。そして、英語がまた悪化する恐れもある。それ以外の多くの問題について熟考して下した決断は・・・

ハリウッドで成功するために帰国しよう!!

帰国することを決意した。これはある意味賭けだった。誓うような気持ちでこの地にまた戻ってくると心に刻んだ。海外から一時帰国してそのまま日本に住んでいる人達を何人も見ていたから自分もそうならないんじゃないかと恐れた。結局自分がいるべき最善の場所をみんなが自分自身で選んだんだからそれは決して悪いことじゃないと思う。自分でも海外での生活がときとしては実は空虚なものなんじゃないかと思えることもあった。でも、今回の帰国はあくまで次のステップに行くための手段だった。だから絶対にこの気持ちを揺るがさないと心に鍵をかけることにした。

きっと一度たりともホームシックにならなかったのは、やりたいことに挑戦していて忙しかったからだともふと思った。自分の居場所をまだ探していたからだったかもしれない。

このアメリカ生活はどうだったか??そこから何を得たか??

ふと振り返ってみる。ここで俳優になるってことは予想していたよりは難しいかもしれない(笑)いやっ正確には、成功するための道は複雑で、死ぬ気でやって本気で頭も使わなきゃいけないということ。ここには、道しるべも何もない。荒れた荒野しかないと思った方が身のためだ。そして、ハリウッドで挑戦する前に生活の基盤をしっかりと確立しなければいけない。漂っているワカメではなく、イカリを下ろした船にならなければいけない。前に進んでも、ときには後ろに戻ってもいいのかもしれない。でも、少なくても周りに流されずに自分自身をコントロールすることができなければ道は開けない。そう強く感じた。

もうひとつハリウッドで見つけたものは冒険だった!ときには危険と隣り合わせになることもあったけれど、ここには今まで釣り、ゲームや映画の世界でしか体験したことのないようなワクワクする冒険があった。そうそれは囲まれた檻の中で与えられた食事を食べるのではなく、自分から生きるために狩りに行くような感覚だ。これが人生で求めていたものだった!!
明日、何が起きるかわからない。だから今を真剣に生きる。自分はうまくは生きられないけれど、何かに自分を懸けることだけはできると信じた。この先の見えない大地で本気でやりたくなった。

アメリカに渡って9ヶ月。第一回戦は幕を閉じようとしていた。下見としてできたことはいくつかあるとは思うけれど、できなったことは無数にある。それは次回への課題だ。日本に帰ること、それは後戻りではなかった。でも、実質この帰国は予定外のものだったので、自分の信念がどれほどのものなのかを試したくなった。だから日本での自分にいくつかの試練を課すことにした。そして、それらの試練に自分がこれまで見たことのない「ギリギリ」もしくは「限界」が何かを見せ付けさせられることになる・・・帰国と同時に、今までただ生きてきた場所で新しい冒険が始まろうとしていた・・・

続く・・・

PS.
長い文章を最後まで読んで頂き、ありがとうございました!!これで「リアルハリウッド」は終わりです。魂を込めて書いたつもりなので、僕の魂を少しでも感じていただけたら幸いです!これから来年渡米し、本当にリアルタイムで更新できればと思いますので、そちらもよろしくお願いします!その前に、今の日本の生活について一度勝手に書かせてもらうつもりですが(汗)
では2009年もよろしくお願いします!良いお年を!!・・・良いクリスマスも!

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渡辺 竜平(Ryohei Watanabe)

映像クリエーター・写真家・オンライン講師・ブロガー

2007年~2012年までハリウッドで役者に挑戦。現在、写真家兼フリーランス映像クリエーター。Udemyプラットフォームでオンライン講師としても活動、総受講生数が12,000名。ブログでは、映像制作、写真、映画レビュー、NFT関連の事など気ままに書いていきます。

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